実は刺すアブは一部って本当?人を刺すアブと刺さないアブについて紹介

アカウシアブ

アブと聞くとどんなイメージがあるでしょうか?

きっと「人を刺す虫」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

確かにアブの仲間には吸血するタイプのものがいて、山に行った時などにそれらのアブに刺されることもあります。

一方で、アブと名前のつく虫には多様な種が含まれていて、人を刺さないもの含まれる…

どころか、むしろ"人を刺さないものの方が多数派"なのです。

というわけで今回は、「人を刺すアブと刺さないアブ」を紹介します!


執筆者: 亀田恭平 ネイチャーエンジニア

全国各地で観察した生き物たちの魅力をアプリやブログなどで発信中。もりみらい いきものゲームズの開発者。今まで出会った動植物は「5,000種」以上。書籍「弱虫の生きざま」。

人を刺すアブとその理由

冒頭で紹介した通り、「アブ」と名のつく昆虫には、実にさまざまなものがいます。

・ムシヒキアブ
・シギアブ
・ハナアブ
・ウシアブ
・ミズアブ

などなど。

しかしこの中で、人を刺すアブ=吸血性(人や家畜の血を吸う習性)のアブというのはほんの一部。

名前を挙げたものの中で吸血性を持つのは、なんと「ウシアブ」だけ。

ウシアブ

ウシアブ

日本で吸血性を持つアブは、ほぼ「アブ科」というグループに属するものに限定されるのです。(※さらにアブ科に属していても、吸血しない種もいる)

ところで、アブたちはなぜわざわざ人を刺すのでしょうか?

それは「人や動物から栄養分を得るため」。

産卵のために多くの栄養分が必要なメスは、リスクを冒して人や牛などの動物に近付き、皮膚を噛んで出た血を吸うのです。

※アブに吸血されることは「刺される」と言われることが多いですが、出血する経緯から考えると「噛まれる」の方が適切かもしれませんね。

このように、吸血する理由は「蚊」と同じであるため、人を刺すアブというのも同様にメスだけです。

そのため、以下の写真はオスですが、こちらは吸血しません。(オスは左右の複眼がくっついています)

ウシアブ オス

人を刺す虫というと「ハチ」が代表的ですが、ハチは防衛のために人を刺すので、基本的に向こうから刺しにやってくることはありません。

一方で吸血性のアブというのは、向こうから近付いて刺しに来るため、ある意味ハチよりも厄介な虫とも言えます。

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アブの種類

名前に「アブ」とつくものについて、吸血性のものとそうでないものに分けて代表的なものを紹介します。

人を刺すアブ(吸血性のアブ)

ウシアブ

ウシアブ

代表的な吸血性のアブ。

"牛や馬を吸血すること"が名前の由来です。

ウシアブにはよく似た姿のものが複数いますが、その似たものも吸血性のアブです。

アカウシアブ

アカウシアブ

スズメバチにそっくりな黄色と黒のカラーリングを持つ、国内最大級の吸血アブ。

山に行った時に出会うことが多く、羽音を立てながら向こうからこちらに近付いてくるので、「スズメバチがやってきた!?」と驚かされがちな種です。

車にもよく集まってきます。(※アブは体温と二酸化炭素(排気ガス)を感知してやってくる)

ゴマフアブの仲間

はねにゴマダラ模様がある吸血アブ。

ゴマフアブにはよく似た種が複数いるようですが、はね模様のほか複眼の複雑な模様などから、ゴマフアブの仲間であることは判断できます。

山などで出会うことがあり、他の吸血アブ同様に油断していると噛まれます。

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人を刺さないアブ

ムシヒキアブの仲間

オオイシアブ

オオイシアブ

シオヤアブ オス

シオヤアブ

ムシヒキアブは「肉食性のアブ」で、他の昆虫などを捕食します。

その狩りの方法は、背後からの奇襲。

獲物を見つけると背後から急襲し、針のように尖った口器で獲物を突き刺し、そのままその体液を吸うのです。

獲物を探すためか、手すりや葉の上など、見通しの良い場所に止まっていることが多いです。

人が刺されることはありませんが、獲物となる昆虫にとっては恐ろしい存在でしょう。

ツリアブの仲間

ビロウドツリアブ

ツリアブは「ホバリング(空中で静止)」をする習性を持つアブで、その姿が糸で吊られているように見えることが名前の由来のようです。

吸血性はありません。

写真のビロウドツリアブは春先に見られるツリアブで、ずんぐりした姿と小さな花の蜜を吸う姿から、なんだか癒しを与えてくれる虫です。

ハナアブの仲間

ナミハナアブ

ナミハナアブ

ホソヒラタアブ

ホソヒラタアブ

ハナアブは名前にアブとつきますが、分類的にはハエの仲間。

こちらも吸血性はなく、成虫が花の蜜を吸う習性を持つものが多いです。

黄色と黒の配色を持つものが多く、これはハチに擬態して身を守っていると言われています。

カラフルで色鮮やかなものも多く、ハエ目に属する虫の中でも華やかなイメージのグループです。

「アブ」と呼ばれる虫には、実に多様な姿・習性を持つものがいます。

そのほとんどは人を刺すことはないし、中には美しい姿を持つなど魅力的なものもたくさんいます。

ここで紹介した内容をヒントに、安全なアブと分かったら、ぜひ観察してみてください!

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